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会計税金の解説記事

公認会計士・税理士の松本佳之のブログです。 記事は間違いのないように慎重に掲載していますが、
記事の誤りや情報の不足に基づき損害を与えたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

2016年05月

17 5月

ストックオプション税制について

ストックオプション制度とは、会社が取締役や従業員に対して、将来の一定期間(権利行使期間)内において、あらかじめ定められた価額(権利行使価額)で会社の株式を取得することのできる権利を付与することをいいます。付与を受けた取締役や従業員は、権利行使することで、株価を事前に定められた価額で取得することができます。株価が上昇していれば売却してその差額の分の利益を得ることができます。

■課税関係は?

ストックオプションを付与された者(個人の場合)の課税関係は次のとおりとなります。

ストックオプション税制

税制適格ストックオプションは譲渡するまで課税が繰り延べられ、さらに、譲渡所得の一律の税率(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)で課税されるため、一般的には課税上は有利になると考えられます。


■税制適格ストックオプションの要件は?
 
ストックオプション税制の適用を受ける税制適格ストックオプションは、次のすべての要件を満たすストックオプションのことをいいます。

1.付与対象者が次のいずれかに該当するものであること(一定の大口株主及びその特別関係者を除く。)
・自社の取締役、執行役または使用人(およびその相続人)
・発行済株式総数の50%超を直接または間接に保有する法人の取締役、執行役または使用人(およびその相続人)

2.権利行使期間が付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過するまでの間であること

3.権利行使価額がストックオプションに係る契約締結時の一株当たり価額以上であること

4.権利行使価額の合計が年間1,200万円を超えない。

なお、監査役は付与対象者要件には当てはまらないため、監査役に付与したストックオプションは税制適格ストックオプションとはなりません。


同様に業績向上のインセンティブとして用いられるリストリクテッド・ストック(RS)の解説はこちら
 
17 5月

一定規模以上の医療法人に公認会計士監査が義務付けられました

平成27年9月16日に「医療法の一部を改正する法律」が成立し、平成27年9月28日に公布されました。
この法律では、医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するため、地域医療連携推進法人の認定制度を創設するとともに、医療法人について、貸借対照表等に係る公認会計士等による監査、公告等に係る規定及び分割に係る規定を整備する等の措置を講ずることとしています。

医療法人制度の見直しに関して、医療法人の経営の透明性の確保及びガバナンスの強化を目的として、一定規模以上の医療法人は、公認会計士または監査法人の監査を受けなければならないこととなりました(改正医療法第51条第6項)。
そして、公認会計士または監査法人による監査を受けなければならない医療法人については、省令(厚生労働省令第96号 平成28年4月20日)で次のように定められました。

1.負債の額が50億円以上または事業収益の額が70億円以上医療法人
2.負債の額が20億円以上または事業集積の額が10億円以上社会医療法人
3.社会医療法人債発行法人である社会医療法人

改正医療法の施行日は平成29年4月2日とされており、同日以後開始する事業年度より適用しなければなりません。

私が関与しておりますアルテ監査法人(東京、大阪)でも医療法人の監査や社会福祉法人の監査を行っております。小規模の監査法人ではありますが、その分、間接コストが少なく、大手監査法人と比較してより低い監査報酬を提示できる体制があります。監査するメンバーも監査経験が最低5年以上あるもので構成されており、プロフェッショナルの品質でサービスを提供しております。監査に関する相談も無料で承っておりますのでお気軽にご相談ください。
11 5月

【平成28年度税制改正】外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充

平成28年度税制改正により、外国人旅行者向け消費税免税制度について、平成28年5月1日より免税販売の対象となる一般物品の購入下限額が5千円に引き下げられるほか、手続きの簡素化等の措置が講じられることとなりました。

■消費税免税制度とは?
 
免税店を経営する事業者が、外国人旅行者などの非居住者に対して一定の方法で販売する免税対象物品は、消費税が免除される制度をいいます。免税店を開設しようとする事業者は、販売場ごとに、事業者の納税地を所轄する税務署長の許可が必要です。


■どのような改正が行われた?

(1)免税の対象となる最低購入金額の引き下げ
一般物品について、免税の対象となる最低購入金額が「10,000円超」から「5,000円以上」に引き下げられます。また、消耗品についても最低購入金額が「5,000円超」から「5,000円以上」に引き下げられます。これにより、単価の低い民芸品や伝統工芸品についても、免税で購入しやすくなります。

(2)簡便な海外直送手続の創設
免税購入物品を免税店から直接海外の自宅や空港等へ配送する場合、外国人旅行者はパスポートの提示と運送契約書の写しの提出により免税を受けられる制度が設けられました(購入記録票の作成の省略等、免税手続の大幅簡略化)。

(3)免税手続カウンター制度の利便性向上
商店街の中に存在するショッピングセンター(設置者が商店街の組合員)に入るテナント等が商店街の組合員でなくとも、当該テナントでの購入物品と商店街の組合員の店舗での購入物品を免税手続カウンターで合算することが可能となります。なお、事前に税務署長の承認が必要です。

(4)購入者誓約書の電磁的記録による保存
免税品購入時に免税店に提出し、免税店で7年間保存することが義務付けられている購入者誓約書について、電磁的記録による提出・保存が可能となります。


■いつから適用される?

平成28年5月1日以降に改正後の制度を適用することができます。


平成28年度税制改正の全体の概要はこちら

 
10 5月

【平成28年度税制改正】加算税制度の見直し

加算税制度について、次のとおり見直しが行われました。

1.税務調査の事前通知後に修正申告したときの加算税

これまで税務調査の事前通知後であっても更正の予知をしていない段階で修正申告を行った場合、過少申告加算税は課されていませんでした。また、期限後申告または修正申告に基づく無申告加算税は5%が適用されていました。
今回の改正により、過少申告加算税及び無申告加算税について、「税務調査の事前通知後、更正があるべきことを予知してされたものでない」申告に関して新たな措置が導入され、それぞれ税率が引き上げられました。
例えば、税務調査の事前通知があった後、臨場調査が開始される前に修正申告を行った場合などは、これまで加算税は課せられませんでしたが、今後は加算税が課せられることとなります。
この改正は、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。
 

■税務調査の事前通知後、更正があるべきことを予知してされたものでない申告に対する加算税の適用税率

更正予知なしの場合の加算税1


■修正申告・期限後申告のタイミングと加算税の適用税率

更正予知なしの場合の加算税2


2.加算税の加重措置の導入

悪質な行為を防止するため、過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を賦課されたものが、再び「無申告又は仮装・隠蔽」に基づく修正申告書の提出等を行った場合については、加算税を10%加重する措置が導入されます。
この改正は、平成 29 年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用されます。

■無申告、仮装・隠蔽の場合に適用される加算税の税率
加算税の加重措置

 
平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
 
10 5月

リストリクテッド・ストック(RS)とはどのような制度か?

リストリクテッド・ストック(RS)とは、諸外国で役員報酬として一般的に用いられている株式報酬制度のことをいい、一定期間の譲渡制限が付された現物株式を報酬として付与するものです。譲渡制限期間中は株式の譲渡ができないため、業績向上のインセンティブが付与され、企業価値の向上が期待されます。欧米では、譲渡制限期間中に一定の勤務条件(勤務継続や業績達成等)等を付し、条件が満たない場合には株式が没収される等の設計をして用いられています。

平成28年度税制改正で、役員給与として支給された一定の譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)による給与を届出が不要となる事前確定届出給与の対象とする制度整備が行われました。また、リストリクテッド・ストックの交付に係る経済的利益の課税時期について、株式交付日ではなく譲渡制限解除日となる場合の要件の明確化が行われました。

今後、攻めの経営を促すための報酬制度として広く活用されることが期待されています。

■リストリクテッド・ストック(RS)のイメージ

リストリクテッド・ストック
 

同様に業績向上のインセンティブとして用いられるストックオプション制度についての税制の解説はこちら
 
10 5月

【平成28年度税制改正】地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

地方創生に取り組む地方を応援するため、地方公共団体が行う一定の地方創生事業に対する企業の寄附について、現行の損金算入措置に加え、法人住民税、法人事業税、法人税の税額控除の優遇措置が新たに講じられました。企業版ふるさと納税とも言われますが、経済的な見返りがある寄付は対象外となるため、個人版ふるさと納税のような利用の仕方はできません。

■いつから?
 
地域再生法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの間に行った寄付について適用されます。


■どうなる?
 
地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金を支出した場合、法人税及び住民税から税額控除できる制度が創設されます。企業が寄付をした場合の、実質負担が最低で約40%程度で済むこととなります。なお、1企業における1事業当たりの寄付額の下限額は、10万円となります。
なお、本社が所在する地方公共団体への寄付は本税制の対象外となります。また、寄付の代償として経済的利益を伴わないものである必要があります。


■地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金とは?
 
地方公共団体が、地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けた場合における、当該計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対する寄付のことをいいます。なお、三大都市圏にあり地方交付税の不交付団体である都道府県・市町村は対象外となります。


■具体的に税額控除できる金額は?
 
従前の損金算入措置(約3割の負担軽減)に加えて
A法人事業税:寄付金額×10%の税額控除(税額の20%(平成29年度以降は15%)を上限)
B法人住民税:寄付金額×20%の税額控除(税額の20%を上限)
C法人税:Bで控除しきれなかった金額と寄付金額×10%とのうちいずれか少ない金額の税額控除(5%を上限)


9 5月

【平成28年度税制改正】中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限延長

中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限が2年延長されました。ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は適用することができないように改正されました。所得税も同様です。

■ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは?
使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上のものは減価償却資産となるのが原則です。
これについて、中小企業者等が、取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産(一括償却資産の適用を受けるものを除く)について、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまで(※)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年分の必要経費に算入できるという特例をいいます。
(※)事業年度が1年に満たない場合は月割りします。

(中小企業者等とは?)
青色申告法人である中小企業者または農業協同組合等をいいます。
ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は除かれます。

(適用期限は?)
平成30年3月31日(従来の平成28年3月31日から2年間延長)までの間に取得などして事業の用に供した場合に適用することができます。


■適用対象法人の改正点
平成28年度税制改正で、従来の適用対象法人の要件に「事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものに限る。」という要件が加わりました。そして、政令で、「常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする。」と規定されました(租税特別措置法施行令39条の28第1項)。
これにより、常時使用する従業員の数が1,000人超の中小企業者は、平成28年4月1日の施行日以後に取得等した減価償却資産について、本特例を適用することができなくなります。


少額減価償却資産の特例 対象法人
 

平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
 
7 5月

【平成28年度税制改正】法人事業税(地方税)の外形標準課税の更なる拡大

平成28年4月1日以後開始事業年度より資本金1億円超の法人事業税の外形標準(付加価値割・資本割)が拡大されます。


■外形標準課税の対象法人は?

外形標準課税の対象となるのは、事業年度終了の日現在における資本金の額または出資金の額が1億円超の法人です。あくまで「資本金」のみで1億円を超えているかどうかで判断しますので、資本金等の額は対象かどうかの判断には関係ありません。
なお、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は除かれます。


■いつから?どうなる?

外形標準課税の対象法人の事業税率は次のとおりとなります。
所得割の税率が引き下げられる一方で、付加価値割・資本割の税率が引き上げられます

外形標準課税の拡大

ただし、中堅企業を対象に負担変動の軽減措置が設けられます。
これにより、今後2年間、現行制度より中堅企業の負担が拡大しないことが確保されています。


■中堅企業の負担変動の軽減措置とは?

中堅企業(付加価値額が40億円未満の法人)は、一定期間、負担変動の軽減措置が設けられています。
適用年度について平成27年度の税率を適用して計算した税額適用年度の税率を適用して計算した税額を比較し、増加した金額の一定割合について負担軽減のための控除を受けることができます。


外形標準課税の拡大 負担軽減措置
 

(負担変動の軽減措置の控除率)

外形標準課税の拡大 負担軽減措置控除率


■影響は?

付加価値割、資本割といった利益(所得)に直接関係しない部分に対する税率が引き上げられる一方、利益(所得)に応じて課税される所得割の税率が引き下げられます。その結果、赤字の大規模企業には増税となり、黒字の小規模企業には減税となります。なお、中堅企業の負担変動の軽減措置により、今後2年間は現行制度よりも税額が増加しないことが確保されています。
 
平成28年度税制改正の全体の概要はこちら