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会計税金の解説記事

公認会計士・税理士の松本佳之のブログです。 記事は間違いのないように慎重に掲載していますが、
記事の誤りや情報の不足に基づき損害を与えたとしても責任は負いかねますのでご了承ください。

10 5月

【平成28年度税制改正】地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

地方創生に取り組む地方を応援するため、地方公共団体が行う一定の地方創生事業に対する企業の寄附について、現行の損金算入措置に加え、法人住民税、法人事業税、法人税の税額控除の優遇措置が新たに講じられました。企業版ふるさと納税とも言われますが、経済的な見返りがある寄付は対象外となるため、個人版ふるさと納税のような利用の仕方はできません。

■いつから?
 
地域再生法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの間に行った寄付について適用されます。


■どうなる?
 
地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金を支出した場合、法人税及び住民税から税額控除できる制度が創設されます。企業が寄付をした場合の、実質負担が最低で約40%程度で済むこととなります。なお、1企業における1事業当たりの寄付額の下限額は、10万円となります。
なお、本社が所在する地方公共団体への寄付は本税制の対象外となります。また、寄付の代償として経済的利益を伴わないものである必要があります。


■地方創生推進寄付活用事業に関連する寄付金とは?
 
地方公共団体が、地域再生計画を作成し、内閣総理大臣の認定を受けた場合における、当該計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に対する寄付のことをいいます。なお、三大都市圏にあり地方交付税の不交付団体である都道府県・市町村は対象外となります。


■具体的に税額控除できる金額は?
 
従前の損金算入措置(約3割の負担軽減)に加えて
A法人事業税:寄付金額×10%の税額控除(税額の20%(平成29年度以降は15%)を上限)
B法人住民税:寄付金額×20%の税額控除(税額の20%を上限)
C法人税:Bで控除しきれなかった金額と寄付金額×10%とのうちいずれか少ない金額の税額控除(5%を上限)


9 5月

【平成28年度税制改正】中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限延長

中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例の適用期限が2年延長されました。ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は適用することができないように改正されました。所得税も同様です。

■ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは?
使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上のものは減価償却資産となるのが原則です。
これについて、中小企業者等が、取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産(一括償却資産の適用を受けるものを除く)について、その取得価額の合計額のうち300万円に達するまで(※)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年分の必要経費に算入できるという特例をいいます。
(※)事業年度が1年に満たない場合は月割りします。

(中小企業者等とは?)
青色申告法人である中小企業者または農業協同組合等をいいます。
ただし、常時使用する従業員数が1,000人を超える法人は除かれます。

(適用期限は?)
平成30年3月31日(従来の平成28年3月31日から2年間延長)までの間に取得などして事業の用に供した場合に適用することができます。


■適用対象法人の改正点
平成28年度税制改正で、従来の適用対象法人の要件に「事務負担に配慮する必要があるものとして政令で定めるものに限る。」という要件が加わりました。そして、政令で、「常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とする。」と規定されました(租税特別措置法施行令39条の28第1項)。
これにより、常時使用する従業員の数が1,000人超の中小企業者は、平成28年4月1日の施行日以後に取得等した減価償却資産について、本特例を適用することができなくなります。


少額減価償却資産の特例 対象法人
 

平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
 
7 5月

【平成28年度税制改正】法人事業税(地方税)の外形標準課税の更なる拡大

平成28年4月1日以後開始事業年度より資本金1億円超の法人事業税の外形標準(付加価値割・資本割)が拡大されます。


■外形標準課税の対象法人は?

外形標準課税の対象となるのは、事業年度終了の日現在における資本金の額または出資金の額が1億円超の法人です。あくまで「資本金」のみで1億円を超えているかどうかで判断しますので、資本金等の額は対象かどうかの判断には関係ありません。
なお、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は除かれます。


■いつから?どうなる?

外形標準課税の対象法人の事業税率は次のとおりとなります。
所得割の税率が引き下げられる一方で、付加価値割・資本割の税率が引き上げられます

外形標準課税の拡大

ただし、中堅企業を対象に負担変動の軽減措置が設けられます。
これにより、今後2年間、現行制度より中堅企業の負担が拡大しないことが確保されています。


■中堅企業の負担変動の軽減措置とは?

中堅企業(付加価値額が40億円未満の法人)は、一定期間、負担変動の軽減措置が設けられています。
適用年度について平成27年度の税率を適用して計算した税額適用年度の税率を適用して計算した税額を比較し、増加した金額の一定割合について負担軽減のための控除を受けることができます。


外形標準課税の拡大 負担軽減措置
 

(負担変動の軽減措置の控除率)

外形標準課税の拡大 負担軽減措置控除率


■影響は?

付加価値割、資本割といった利益(所得)に直接関係しない部分に対する税率が引き上げられる一方、利益(所得)に応じて課税される所得割の税率が引き下げられます。その結果、赤字の大規模企業には増税となり、黒字の小規模企業には減税となります。なお、中堅企業の負担変動の軽減措置により、今後2年間は現行制度よりも税額が増加しないことが確保されています。
 
平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
 
7 5月

【平成28年度税制改正】欠損金の繰越控除制度の見直し

大法人の欠損金の繰越控除の制限について控除できる欠損金の額の見直しが行われます。


■大法人の欠損金の繰越控除の制限とは?

 中小法人等以外の法人が、青色申告書を提出した事業年度の欠損金等の繰越控除を行う場合、控除できる欠損金等の金額は、控除する前に所得の金額の一定割合に制限されています。


■いつから?どうなる?

大法人の控除限度額と繰越期間が次のように改正されます。

欠損金の繰越控除制度の見直し
 

■その影響は?

欠損金のある法人に影響があります。平成28年度は控除限度割合が引き下げられる一方、平成29年度は控除限度割合が引き上げられており、欠損金を控除する年度によってプラスの影響とマイナスの影響が変わります。なお、税効果会計を適用している会社では、繰延税金資産の金額の見直しが必要となる可能性があります。

平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
 
7 5月

【平成28年度税制改正】交際費の損金不算入制度の適用期限延長

飲食費に係る損金算入の特例と中小法人に係る損金算入の特例の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで適用されます。


■飲食費に係る損金算入の特例とは?
 
交際費のうち飲食費(社内飲食費を除く)については、支出額の50%を損金算入することができます。


■中小法人に係る損金算入の特例とは?
 
中小法人は、支出した交際費等の額のうち年800万円までは損金算入することができます。


■交際費課税の体系

交際費課税の体系

 

7 5月

【平成28年度税制改正】中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限延長

中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限が2年延長され、平成30年3月31日までに開始する事業年度まで、中小企業者等以外の法人は、欠損金の繰戻し還付の適用ができないこととなります。

■欠損金の繰戻しによる還付制度とは?


欠損金の繰り戻し還付
 

■ 中小企業者等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置とは?

現在、欠損金の繰戻しによる還付制度は、中小企業者等以外の適用が停止されています。

欠損金の繰り戻し還付 適用フロー


■中小企業者と中小法人の違い

中小法人(法人税法で規定)と中小企業者(租税特別措置法で規定)は範囲が異なっていますので注意してください。

平成28年度税制改正の全体の概要はこちら
7 5月

多世帯同居改修工事等に係る特例「標準的な工事費用相当額の計算方法」


■標準的な工事費用相当額の計算方法

住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例で用いる「標準的な工事費用相当額」とは、多世帯同居改修工事等につき国土交通大臣が財務大臣と協議して多世帯同居改修工事等の内容に応じて定める金額の合計額をいいます。

なお、平成28年国土交通省告示第586号「法第41条の19の3第5項に規定する多世帯同居改修工事等の標準的な費用の額として国土交通大臣が財務大臣と協議して当該多世帯同居改修工事等の内容に応じて定める金額を定める件」で、次のように定められています。

Aキッチンに関する工事
 ・ミニキッチンを設置するもの以外     ・・・ 1,649,200円
 ・ミニキッチンを設置するもの       ・・・    434,700円

B浴室に関する工事
 ・浴槽及び給湯設備を設置するもの ・・・ 1,406,000円
 ・浴槽を設置するもの       ・・・    837,800円
 ・シャワーを設置するもの       ・・・ 589,300円

Cトイレに関する工事         ・・・ 532,100円

D玄関に関する工事
 ・地上階に玄関を増設するもの   ・・・  655,300円
 ・地上階以外に玄関を増設するもの ・・・ 1,244,500円

「標準的な工事費用相当額」は、多世帯同居改修工事の改修部位ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額(上記の金額)に当該多世帯同居改修工事を行った箇所数を乗じて計算します。 
7 5月

【平成28年度税制改正】住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例

平成28年税制改正で、多世帯同居に対応するために住宅の改修工事を行ったときに所得税が減税される制度が創設されました(住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例)。所有する居住用の家屋について一定の多世帯同居改修工事等を行い、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に居住した場合で、一定の要件を満たすときは、この特例を適用できることとなります。

■多世帯同居改修工事とは?

多世帯同居改修工事とは、Aキッチン、B浴室、Cトイレ、D玄関のうち少なくとも1つを増設し、その結果、いずれか2つ以上が複数箇所となる工事で、標準的な工事費用相当額が50万円超であるものをいいます。補助金等の交付がある場合には、補助金等の額を控除します。

例えば、
改修前:キッチン1、浴室1、トイレ2、玄関1
改修後:キッチン1、浴室2、トイレ2、玄関1(浴室が増設され、浴室とトイレが複数箇所となる)
となるような工事です。

「増設」が要件のため、既存のキッチン、浴室、トイレ、玄関を同じ場所で「改修」する工事は、本税制の適用対象の工事とはなりません。また、増改築等工事証明書をもらうことが必要です。


■特例が適用できる時期は?

平成28年4月1日から平成31年6月30日までの間に多世帯同居改修工事等を行い居住した場合


■特例の概要は?

1ローン控除型減税2投資型減税の2種類の制度があり、いずれかの特例を適用することができます。

1.ローン控除型減税

償還期間が5年以上の住宅借入金を利用して、多世帯同居改修工事等を行い居住した場合に適用できる特例です。
改修工事等を行うために借り入れた住宅借入金等の年末残高(1,000万円を限度)の区分に応じ、一定の割合を所得税の額から控除することができます。控除期間は5年で、住宅の増改築等に係る住宅借入金等特別控除との選択適用となります。

所得税の額から控除する額は次の計算式で算定します。

 控除額=ローン残高×控除率

 <控除率>
 多世帯同居対応改修工事費用相当額とそれ以外の工事費用相当額で控除率が異なります。
 
多世帯同居対応改修工事ローン控除の特例 控除率

なお、その年分の合計所得金額が3,000万円を超える人は、その年分において控除を受けることができません。
また、「改修後の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上の部分が居住用部分に関するものであること」や「工事費用の2分の1以上の額が居住用部分の工事費用であること」など主な要件は改正前の住宅の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の要件と同様となります。

この特例の適用を受けるためには「増改築等工事証明書」等の書類を添付して確定申告をする必要があります。
ただし、給与所得者は確定申告をした年分の翌年以降の年分については、年末調整でこの特例の適用を受けることができます。

2.投資型減税

多世帯同居改修工事等を行い居住した場合に、標準的な工事費用相当額(上限250万円)の10%の金額を所得税の額から控除することができます。投資型減税は、自己資金で工事を行った場合でも適用することができます。

所得税の額から控除する額は次の計算式で算定します。

 控除額=標準的な工事費用相当額(上限250万円)×10%

なお、次の人はその年分においては本特例の適用を受けることができません。
・その年分の合計所得金額が 3,000万円を超える人
・その年の前年以前3年内の各年分において本特例の適用を受けた人
・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除又は特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の適用を受けた人

この特例の適用を受けるためには「増改築等工事証明書」等の書類を添付して確定申告をする必要があります。

平成28年度税制改正の全体の概要はこちら